研究計画書のためのリサーチクエスチョンの見つけ方|重要ポイント完全解説

リサーチクエスチョン

 

【国内MBA】研究計画書のためのリサーチクエスチョンの見つけ方|重要ポイント完全解説

 

リサーチクエスチョンの重要性とは

修士論文がある国内MBAの研究計画書において、リサーチクエスチョンは出願の核心部分になります。
リサーチクエスチョンとは研究を通じて明らかにしたい問いや課題になります。
つまり、入学後、あなたの研究が何を明らかにしようとしているのかを明確に示す問いです。
適切なリサーチクエスチョンを設定することで、研究の方向性が定まり、効率的に調査を進めることができます。
また、読者にとっても研究の目的が理解しやすくなります。良いリサーチクエスチョンは、
研究全体の質を高め、有意義な結果を導き出すための道標となります。
またリサーチクエスチョンの設定はビジネスでも課題発見や仮説設定のおいて役に立ちます。
今回は、リサーチクエスチョンの設定で苦労する方も多いので記事にまとめました。

リサーチクエスチョンは仮説から考える
スタートアップ仮説思考(東大)

 

適切なリサーチクエスチョンの特徴

適切なリサーチクエスチョンには、いくつかの重要な特徴があります。まず、具体的で明確であること。曖昧な表現を避け、何を調べるのかが一目で分かるようにします。次に、実現可能性があること。与えられた時間と資源の中で答えを見つけられる問いであるべきです。また、重要性や新規性があること。その分野に新たな知見をもたらす可能性のある問いを設定しましょう。最後に、倫理的に問題がないことも重要です。

 

一般的なリサーチクエスチョンの例

リサーチクエスチョンの例をいくつか挙げてみましょう。
「日本の若者の投票率低下の主な要因は何か?」
「オンライン学習は従来の対面授業と比べて、学習効果にどのような違いをもたらすか?」
「気候変動が農作物の収穫量に与える影響はどの程度か?」
これらの例は、特定のテーマに焦点を当て、調査可能で明確な問いとなっています。自分の研究分野に応じて、同様の構造で問いを作成してみましょう。

 

リサーチクエスチョンと研究目的の違い

リサーチクエスチョンと研究目的は密接に関連していますが、異なる役割を持ちます。リサーチクエスチョンは、研究で答えを見つけようとする具体的な問いです。一方、研究目的は、その研究が達成しようとする全体的な意図や狙いを示します。例えば、リサーチクエスチョンが「スマートフォンの使用時間と学業成績にはどのような関係があるか?」だとすると、研究目的は「スマートフォン使用が学生の学習に与える影響を理解し、教育政策への示唆を得ること」となるでしょう。

 

リサーチクエスチョン設定の落とし穴

リサーチクエスチョンを設定する際によくある落とし穴がいくつかあります。一つは、範囲が広すぎて焦点が定まらない問いを立ててしまうこと。例えば「教育はどのように改善できるか?」というのは範囲が広すぎます。また、単純に「はい」「いいえ」で答えられる問いも避けるべきです。「スマートフォンは学習に悪影響を与えるか?」よりも「スマートフォンの使用は学習にどのような影響を与えるか?」の方が適切です。さらに、自分の予想や希望する結果に誘導するような偏った問いも注意が必要です。

 

リサーチクエスチョンの導出プロセス

 

先行研究の調査方法

先行研究の調査は、リサーチクエスチョンを導出する上で不可欠なステップです。まず、信頼性の高い学術データベース(Google Scholar、JSTPRなど)を活用しましょう。キーワードを組み合わせて検索し、関連する論文や書籍を見つけます。最新の研究動向や、まだ解明されていない課題を把握することが重要です。また、参考文献リストを辿ることで、より多くの関連研究を見つけることができます。系統的に情報を整理し、自分の研究の位置づけを明確にしていきましょう。

論文の読み方についてはこちら
論文の読み方 / How to survey(慶応義塾大学)

 

文献レビューの重要性

文献レビューは、単なる先行研究の要約ではありません。これは、既存の研究を批判的に分析し、研究分野の全体像を把握するプロセスです。文献レビューを通じて、研究の傾向、主要な議論、そして未解決の問題を特定できます。これにより、自分の研究がどのように既存の知識に貢献できるかが明確になります。また、文献レビューは、自分のリサーチクエスチョンの独自性や重要性を示す根拠にもなります。効果的な文献レビューは、質の高いリサーチクエスチョンの基盤となるのです。

文献レビューを通じて、既存の研究で未解決の問題や矛盾点に気づくかもしれません。
これにより、新たな研究クエスチョンを見つけるためのヒントが得られます。

 

フレームワークの活用方法

フレームワークは、リサーチクエスチョンを体系的に考える際に役立ちます。
よく使われるのは「PICO」フレームワークです。
P(Population:対象集団)、I(Intervention:介入)、C(Comparison:比較対象)、
O(Outcome:結果)の要素を明確にすることで、具体的な問いが形成されます。
例えば、「大学生(P)において、早寝早起きの習慣(I)は、
不規則な睡眠習慣(C)と比べて、学業成績(O)にどのような影響を与えるか?」というようにです。
アイデアが出てこない場合、このようなフレームワークを使うことで、
研究の焦点が明確になり、適切なリサーチクエスチョンの設定に役立ちます。

 

具体例を用いた実践手法

経営学の文脈で、リサーチクエスチョンの導出プロセスを簡単な具体例を通じて見てみましょう。
例えば、「従業員のモチベーション」に興味がある場合、以下のステップを踏みます:

    0.キーワードの選定:モチベーション
    1.広いテーマの設定:「従業員のモチベーションと企業業績」
    2.先行研究調査:従業員のモチベーションに関する最新の論文や書籍を読む。
    3.焦点の絞り込み:「IT企業における従業員のモチベーション」に注目
    4.問題点の特定:「従来の金銭的インセンティブだけでは、長期的なモチベーション維持が難しい」という課題を発見
    5.リサーチクエスチョンの形成:「IT企業において、自律性を重視した業務設計は、
    従来の金銭的インセンティブと比べて、従業員の長期的なモチベーションと生産性にどのような影響を与えるか?」

このプロセスを通じて、経営学の分野で具体的で研究可能なリサーチクエスチョンが形成されます。このリサーチクエスチョンは、現代の企業が直面する実際の課題に焦点を当てており、学術的にも実務的にも価値のある研究につながる可能性があります。
この段階で、調査手法は気にする必要はありませんのでまずは、「問い」を設定してみましょう。

 

良いリサーチクエスチョンとは

良いリサーチクエスチョンには5つの基準があります。

  • 明確で具体的:クエスチョンは明確で具体的である必要があります。曖昧な言葉や広すぎる範囲のクエスチョンは避ける。
  • 研究可能:クエスチョンは、利用可能なデータやリソースを使用して答えられるものである必要があります。
  • 実行可能:クエスチョンは、与えられた時間枠やリソース内で実行可能である必要があります。
  • 関連性:クエスチョンは、あなたの実務経験や仕事、所属企業に関連性があるものである必要があります。
  • 複雑性:クエスチョンは、単純な「はい」や「いいえ」で答えられるものではなく、詳細な分析や議論を必要とするものである必要があります。
  • 新規性:クエスチョンはすでにほかの論文で分析されておらず、分析する価値を示す必要があります。
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    実際にリサーチクエスチョンを設定しても、実行可能でなかったり、研究可能でないものが多いです。面接でも問われる部分にもなりますので、しっかりと考えて記載しましょう。

     

    リサーチクエスチョンとデータ収集方法の決定

     

    質的データの収集方法

    質的データは、数値化が難しい情報を深く理解するのに適しています。主な収集方法には、インタビュー、フォーカスグループ、参与観察などがあります。例えば、「環境教育が児童の環境意識にどのような影響を与えるか」というリサーチクエスチョンに対しては、児童へのインタビューや授業観察が効果的でしょう。質的データは、現象の背景にある理由や感情を理解するのに役立ちます。ただし、データの解釈に主観が入りやすいので、複数の視点からの分析が重要です。

     

    量的データの収集方法

    量的データは、数値化できる情報を統計的に分析するのに適しています。主な収集方法には、アンケート調査、実験、既存の統計データの利用などがあります。例えば、「環境教育プログラムの前後で、児童の環境配慮行動にどの程度の変化があるか」というリサーチクエスチョンには、行動チェックリストを用いた調査が適切でしょう。量的データは、大規模なサンプルから一般的な傾向を把握するのに役立ちます。ただし、現象の深い理解には限界があるので、質的データと組み合わせることも検討しましょう。

     

    適切なサンプリング技法

    サンプリングは、研究の対象となる母集団から適切に代表的なサンプルを選ぶ過程です。主な技法には、無作為抽出、層化抽出、クラスター抽出などがあります。例えば、「大学生の学習習慣と学業成績の関係」を調べる場合、単純に便利な学生を選ぶのではなく、学年や学部を考慮した層化抽出が適切でしょう。適切なサンプリングは、研究結果の一般化可能性を高めます。ただし、完璧なサンプリングは難しいので、研究の限界点として認識することも重要です。

     

    データの信頼性と妥当性の確保

    データの信頼性とは、同じ条件で測定を繰り返した際に同様の結果が得られることを指します。妥当性は、測定したいものを本当に測定できているかを示します。例えば、環境意識を測る質問紙を作成する場合、同じ人に複数回実施して一貫した結果が得られるか(信頼性)、本当に環境意識を測れているか(妥当性)を確認する必要があります。信頼性を高めるには、測定方法の標準化や複数の測定者の活用が有効です。妥当性を高めるには、専門家の意見を取り入れたり、既存の確立された尺度を参考にしたりすることが重要です。ただ、この部分については出願時点では大きく問われることはないのですが、アカデミック色の強い学校で面接で聞かれる場合があるので、頭に入れておきましょう。

     

    具体的なデータ収集ツールの選択

    データ収集ツールの選択は、リサーチクエスチョンと研究デザインに基づいて行います。質問紙調査ならGoogle Forms、インタビューならICレコーダーやZoom、行動観察ならビデオカメラやフィールドノートなどが考えられます。例えば、「オンライン授業の効果」を調べる研究では、学習管理システム(LMS)のログデータ、オンラインアンケート、ビデオ会議システムを通じたインタビューなどを組み合わせることが有効でしょう。ツールの選択時は、使いやすさ、コスト、データの質、倫理的配慮などを総合的に判断することが重要です。

     

    総評:重要ポイントと今後の指針

    リサーチクエスチョンの設定は、研究計画書の作成において、研究プロセス全体の基盤となる重要なステップです。適切なリサーチクエスチョンは、明確で、実行可能で、かつ重要性のある問いであるべきです。その導出には、綿密な先行研究の調査と批判的な文献レビューが不可欠です。また、フレームワークを活用することで、より体系的にリサーチクエスチョンを形成できます。
    データ収集方法の選択は、リサーチクエスチョンの性質に合わせて行う必要があります。質的データと量的データの特性を理解し、適切に組み合わせることで、より包括的な研究が可能になります。サンプリングの適切性、データの信頼性と妥当性の確保も、研究の質を左右する重要な要素です。
    今後の研究を進める上では、常に批判的思考を持ち、自分の研究の限界点を認識することが大切です。最後に、研究計画書の作成は孤独な作業ではありません。予備校講師や同僚との議論を通じて、リサーチクエスチョンを洗練させていくことが、質の高い研究計画書の作成につながります。
    この指針を参考に、皆さんが国内MBAに入学し意義深い修士論文の執筆を行い、さらなる活躍を果たせることを願っています。

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