Contents
- はじめに
- 1. 【国内MBA受験】研究計画書における先行研究の意義と探し方
- 1.1 なぜ先行研究が重要とされるのか
- 1.2 先行研究の基本的な探し方
- 2. 先行研究が見つからない主な理由
- 2.1 あまり分析する価値がない
- 2.2 新規性の高いテーマや事例研究の場合
- 2.3 テーマの範囲が狭すぎる
- 3. 先行研究がない場面での対応法
- 3.1 参考になりうる関連文献・理論の探し方
- 3.2 他分野・海外論文へ範囲を広げる
- 3.3 資料としての実務報告書や事例集の活用
- 4. 研究計画書における論文テーマ設定のコツ
- 4.1 課題意識の明確化と研究目的の工夫(リサーチクエスチョン)
- 4.1.1 リサーチクエスチョン例とポイント
- 4.2 新規性と先行研究のバランス
- 4.2.1 国内MBA論文テーマによくある新規性とバランスの例
- 5. 「先行研究がない」ときの論文構成の工夫
- 5.1 国内では未研究・未検証テーマの論証方法
- 5.2 理論的枠組みやモデルの独自設定
- 5.3 企業事例や現場調査に基づく実証研究の書き方
- 6. 注意点とリスク:本当に先行研究がないのか再確認
- 6.1 キーワード選定と検索方法の見直し
- 6.2 文献収集時の注意点
- 7. まとめ
はじめに
国内MBA受験で研究計画書を作成する際、「先行研究が見つからない」「関連論文がない」テーマでも、どのように研究テーマを設定し、対策できるのかをこれまでの指導経験をもとに、具体的に解説します。この記事を読めば、先行研究の意義や探し方、先行研究が不足している場合の対応法、そして研究計画書の構成や工夫まで、実践的な方法がわかります。
1. 【国内MBA受験】研究計画書における先行研究の意義と探し方
1.1 なぜ先行研究が重要とされるのか
国内MBA受験において提出が求められる研究計画書では、先行研究の把握と整理が不可欠です。なぜなら、既存の研究内容を踏まえてこそ、あなたが提案するテーマがどのような学術的・実務的意義を持つのか、また新規性や独自性がどこにあるのかを明確に説明できるためです。
先行研究があることで自分の主張に客観性や説得力を持たせることができ、また「自分の研究が学問的にどのポジションに立つのか」を適切にアピールできます。
先行研究を確認し、その限界点や不足点を指摘することで、さらに発展的な研究や今後の実務貢献を目指すことが国内MBA研究計画書作成の基本です。
1.2 先行研究の基本的な探し方
先行研究の探索は研究計画書作成の第一歩として重要です。以下の方法で効率よく国内MBA分野の先行研究を探しましょう。
主な検索場所 | 具体例 | 特徴・ポイント |
---|---|---|
学術論文データベース | CiNii、J-STAGE、国立国会図書館サーチ | 学術的根拠が高く、幅広い分野から探せる。検索キーワード選定が重要。 |
大学・ビジネススクールの紀要・論文集 | 一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学などの大学リポジトリ | 国内MBA関連や経営学の最新動向が集まる。志望校の研究者の論文も優先的にチェック。 |
専門書・書籍 | 「MBAマネジメント・テキスト」、「企業事例に学ぶ戦略論」など | 体系的知識や分野の定番理論を網羅。参考文献リストを辿って再検索。 |
業界レポート・白書 | 経済産業省白書、野村総合研究所レポートなど | 実務面・市場背景の現状把握が得やすい。研究目的の実務的価値を補強できる。 |
検索の際は、キーワードを複数組み合わせて検索する、また図書館や大学の論文リポジトリを活用するといった工夫も大切です。
特に研究分野やテーマに対して「英語論文」や「海外事例」を視野に入れると、さらに多くの先行研究や理論が見つけやすくなります。
もし国内で十分な先行研究が見つからない場合は、類似テーマや近接分野、関連する理論や概念を広く検討する視点が非常に重要です。
2. 先行研究が見つからない主な理由
国内MBA受験や研究計画書作成において、研究テーマに関する先行研究が見つからないという課題に直面することは珍しくありません。ここでは、なぜそのような事態が生じるのか、主な理由を整理します。
2.1 あまり分析する価値がない
学術的・社会的な意義や重要性が低いと見なされているテーマの場合、過去の研究が十分に行われていないことがあります。例えば、特殊な業界の内部制度や、非常に限定的なプロジェクトの事例などは、「研究リソースに対する効果が低い」と判断されがちです。このような場合、類似事例や周辺領域での研究成果を参考にする必要性が高まります。
2.2 新規性の高いテーマや事例研究の場合
新規性が高く、これまで十分に論じられてこなかったテーマや、直近で発生した社会現象や政策、企業事例を扱う研究については、国内外での学術論文の蓄積が乏しいことが一般的です。特に、デジタルトランスフォーメーションやサステナビリティ経営など、変化の著しい分野は先行研究が追いついていない場合も多く見受けられます。
2.3 テーマの範囲が狭すぎる
テーマ設定があまりに具体的で限定的になりすぎている場合、「先行研究が発見できない」と感じやすくなります。例えば、「東京都内の中小建設業における2020年以降のDX推進に関する人的資源管理の研究」など、地域・業種・期間を非常に狭く絞り込みすぎると、該当する学術研究は見つかりにくくなります。
理由 | 説明 | 具体例 |
---|---|---|
分析価値が低い | 社会的・学術的関心が薄く、研究の蓄積が少ない | 極めて限定的な企業風土調査や業界独自制度の分析 |
新規性が高い | テーマが最新動向や未踏領域に該当し、既存論文が不足 | 近年話題のスタートアップによる新規ビジネスモデルの研究 |
範囲が狭い | テーマ設定が特殊すぎて該当文献が見つからない | 特定都市・業種・期間に絞ったピンポイントな研究 |
このような理由を正しく認識することで、「なぜ先行研究が見当たらないのか」について深い理解を持つことができ、以後の研究計画の見直しや文献検索の工夫に役立てることが可能となります。
3. 先行研究がない場面での対応法
3.1 参考になりうる関連文献・理論の探し方
先行研究が見当たらない場合でも、学術的根拠や背景を明確にするためには、可能な限り関連する文献や理論を探し出すことが重要です。テーマそのものに先行研究がなくても、近接領域や類似領域の研究、基礎理論、過去の関連する統計・調査データなどが参考になります。特に日本語・英語双方で文献データベース(CiNii、J-STAGE、Google Scholarなど)や、専門学会誌、大学紀要を活用してキーワードの語句を広げて検索しましょう。また、シソーラスや関連語辞典を利用し、より広い概念や学際的な分野からも文献を探すと有効です。
3.2 他分野・海外論文へ範囲を広げる
国内で先行研究が存在しない場合、関連する他分野や海外の研究動向に目を向けることが欠かせません。たとえば、経営学のテーマであれば、社会学、心理学、産業組織論、公共政策分野の文献も参考になる場合があります。また、先行研究が欧米やアジア諸国で行われているケースも多いため、エビデンスや理論枠組みを海外文献に求めることで、論文の学術的価値を補強できます。
アプローチ | 具体例 | 注意点 |
---|---|---|
他分野の活用 | 心理学分野のチームワーク論、社会学の組織文化論 | 研究の枠組みや前提の違いに注意 |
海外論文の調査 | Harvard Business Review掲載論文、欧州のケーススタディ | 日本国内の状況との相違点を明示する |
3.3 資料としての実務報告書や事例集の活用
学術論文以外にも、政府や民間企業、業界団体などが発行する報告書・白書・事例集などの活用も考えられます。たとえば、中小企業庁や経済産業省の白書、日本政策投資銀行や野村総合研究所の業界レポート、商工会議所や自治体の実務事例など、実践現場のデータや課題が集約されています。これらは、あなたのテーマが現実社会でどのような意義を持つかを示す根拠にもなります。
資料の種類 | 発行主体 | 活用ポイント |
---|---|---|
業界白書・報告書 | 経済産業省、中小企業庁、商工リサーチ | 現状分析や課題の抽出に適用 |
企業事例集 | 日本能率協会、リクルートワークス研究所 | 先進企業の取り組みを紹介、仮説の裏付け |
ただし、これら実務資料は必ずしも学術研究としての厳密性や理論的背景が記されているわけではないため、分析視点や問題設定を研究者として独自に整理した上で利用することが求められます。
4. 研究計画書における論文テーマ設定のコツ
4.1 課題意識の明確化と研究目的の工夫(リサーチクエスチョン)
研究計画書の根幹は「なぜこのテーマを解明したいのか」という課題意識の明確化にあります。
国内MBAにおける研究は、社会的・経営的な実務課題へのアプローチが求められるため、自身の実務経験・気づきから出発することが極めて重要です。
リサーチクエスチョン(研究課題)を明確に言語化することで、テーマの斬新性や学術的意義が伝わりやすくなります。
例えば、「なぜ中小企業におけるDX化が進まないのか」「多様性が組織成果に与える効果とは」といった具体的な問いを設定しましょう。
4.1.1 リサーチクエスチョン例とポイント
リサーチクエスチョン例 | 設定時のポイント |
---|---|
なぜ地方中小企業ではリーダーシップ開発プログラムの定着が難しいのか | 実務現場での課題からテーマを抽出し、背景を簡潔に示す |
サステナビリティ経営が日本の製造業における競争力に与える影響は何か | 社会性や学術的意義を意識し、今後の経営環境変化にも目を向ける |
4.2 新規性と先行研究のバランス
論文テーマは「新規性」と「研究の積み重ね(先行研究)」をバランス良く設定することが不可欠です。
新規性ばかりを重視しすぎると、既存研究との関連性が弱くなり、学術的な評価が下がるリスクが生じます。一方で、先行研究を踏まえつつ独自のアプローチや、未開拓の切り口を加えることで、実務的にも意義のある研究となります。
4.2.1 国内MBA論文テーマによくある新規性とバランスの例
新規性の追求 | 先行研究との関連 |
---|---|
独自の理論モデルの提示 | 既存理論(例:ポーターの競争戦略論)の一部活用 |
近年注目されるESG投資の国内事例分析 | ESGの理論的枠組みや国外事例を踏まえた考察 |
テーマ選定時に「なぜこの分野を、どの視点から、どのように」研究するのかを論理的に説明できる構造を作ることが、研究計画書作成の重要なポイントです。
さらに、日本国内の文脈や独自性を反映させつつも、過去研究や理論との位置づけを意識しましょう。
5. 「先行研究がない」ときの論文構成の工夫
国内MBAの研究計画書や論文執筆の過程で「先行研究がない」と感じた場合でも、そのまま立ち止まるのではなく、論文構成を柔軟かつ論理的に工夫することが重要です。先行研究が乏しいテーマでは、研究の新規性をアピールしつつ、信頼性を担保するための枠組み設定や実証方法が求められます。この章では、国内で前例の少ないMBA論文を構成するための具体的な工夫について解説します。
5.1 国内では未研究・未検証テーマの論証方法
先行研究がない場合でも、研究テーマの社会的・学術的な意義や背景を明確に論述することが欠かせません。例えば「日本国内での調査や検証がなされていないが、海外では議論が進んでいる」「特定業界や企業に特化した研究事例が乏しい」といった文脈を丁寧に示し、“なぜ本研究が必要か”という問題意識を出発点として構成します。既存の理論やフレームワークの日本適用可能性・業界適合性を検証する形で研究テーマを設定するのも有効です。
状況 | 論証上の工夫 |
---|---|
国内で未研究・未検証のテーマ | 社会的・学問的意義を強調し、現状の問題点やギャップを示す |
国外では先行研究あり | 海外事例や理論を参照し、日本への適用の必要性・新規性を説明 |
5.2 理論的枠組みやモデルの独自設定
既存研究が限られている場合、独自の分析枠組みや理論モデルを新たに定義することが求められます。“フレームワーク構築型”の論文構成とすることで説得力を高められます。たとえば、過去の理論や複数分野の知見を組み合わせて「新しい枠組み」や「モデル」を構築し、その枠組みを使って現象を分析・考察する方法が考えられます。
また、国内で利用実績が確認できない分析手法や調査枠組みについても、“本研究が初の適用であること”を明示し、その有効性・課題・適用可能性について自ら検証するスタンスを論文内で示すことが望ましいです。
5.3 企業事例や現場調査に基づく実証研究の書き方
理論的な先行研究が乏しいテーマでも、企業事例や現場調査・フィールドワークを通じて独自にデータを収集・分析する方法は有効です。国内MBA論文では、特定の業界や企業の事例を詳細に分析する「ケーススタディ」や、アンケート調査・インタビュー調査を通じた実証等がよく活用されます。
調査アプローチ | 応用例 |
---|---|
企業事例研究 | 国内企業のマネジメント手法や組織変革事例の分析 |
現場観察・インタビュー | 関係者ヒアリングや従業員アンケートによる現状把握 |
定量調査 | 公開データや独自収集した数値データの統計解析 |
こうした実証的アプローチは、先行研究が乏しい分野における「新規性」や「独自性」を強調しやすいため、論文としての学術的価値や意義を明確にできます。
6. 注意点とリスク:本当に先行研究がないのか再確認
6.1 キーワード選定と検索方法の見直し
先行研究が見つからないと判断する前に、まずはキーワード選定と検索方法を再度点検することが重要です。よく使われる日本語や英語の関連用語だけでなく、類義語・対義語・旧称・略語・専門用語など、多角的に検討することで検索の精度が向上します。例えば「組織コミットメント」なら「組織関与」「オーガニゼーション・コミットメント」など複数のワードで検索してみましょう。
検索時のチェックポイント | 具体例 |
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キーワードを変えて検索 | 「ダイバーシティ経営」「多様性経営」「多様化戦略」等で横断的に調査 |
和英両方での検索 | 「人的資本経営」「Human Capital Management」で国内外データベースを活用 |
被引用論文から遡る | Google ScholarやCiNiiを利用し、既存論文の参考文献を辿る |
学術データベースの複数利用 | CiNii、J-STAGE、日経BP、国立国会図書館デジタルコレクションなど |
強調すべきポイントは、一つの検索ワードやデータベースのみに依存しないことです。徹底的なリサーチを行い、それでも見つからない場合に「先行研究が本当にない」と判断できます。
6.2 文献収集時の注意点
国内MBA受験における先行研究調査では「見つからない」のではなく「見落としている」可能性も念頭に置く必要があります。特に国内事例の場合、学会誌や紀要、地方自治体の研究レポートや民間研究機関の発表など多様なソースに情報が分散しているケースが多々あります。
文献タイプ | 入手例・特徴 |
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学位論文・紀要 | 各大学のリポジトリ、CiNii Dissertationsで検索 |
業界団体・行政資料 | 経済産業省・総務省の調査報告書、商工会議所の白書など |
専門雑誌・ビジネス誌 | 『日経ビジネス』『週刊ダイヤモンド』等のバックナンバーを確認 |
国際論文・英語文献 | ProQuestやScienceDirectなどの海外データベースも参照 |
見落とし防止のため、一次資料や統計データ、特許・法令なども含めて幅広く情報源をあたることを推奨します。特に企業事例を扱う場合、業界紙や業界団体のウェブサイトにも有用な資料が眠っていることがあります。また、主観的な「未発表情報」と思い込まないよう、資料のクロスチェックも徹底しましょう。
7. まとめ
国内MBA受験において、研究テーマの先行研究が見つからない場合でも、関連分野や海外論文、実務報告書等を活用することで論文構成や研究計画書は十分作成可能です。視野を広げた文献収集と課題意識の明確化を意識し、最後まで多面的にテーマを深掘りすることが合格への鍵となります。